第6章 十六歳、臍を噛む(孤爪研磨)
ひんやりとした空気で目が覚めた。ここはどこだろう。
身体を起こすと、隣でなまえが寝ているのに気がついた。一気に昨夜の記憶が戻ってくる。
あのあと、どうやら泣きつかれて二人で朝まで寝てしまったらしい。
だめだ、死にたい。
研磨は頭を抱えた。
なまえを押し倒して泣かせてしまった。どうしよう、怒られる。
ふらふらと立ち上がると、後頭部がずしりと重みを増す。フローリングで寝ていたせいだろう。身体のあちこちも痛い。
迷ったがなまえの部屋から出て行くことにした。親戚の乗る新幹線まではまだ時間がだいぶあるが、仕方がない。公園かどこかで時間を潰そう。
鞄を背負いかけて、ふとなまえを見た。冷たい床で寝ていては風邪を引いてしまうかもしれない。
ベッドに運んであげようと身体を持ち上げるが、重くて引きずることしかできなかった。きっと、クロなら軽々持ち上げられるんだろうな。
クロ、
もう一人の幼馴染の名前がチクリと心を刺した。クロがなまえのことをどう思っているのかなんて知らない。ふたりがどのくらい仲良いのかも知らない。けれど、彼女の口からその名前が出るたびに、研磨の心は大きくかき乱された。
クロはなまえの髪の毛を撫でるのだろうか。抱き合ったりするのだろうか。
そんなことを想像するたびに、どす黒い感情が渦巻いて、どうしようもなくなってしまったのだ。