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【ハイキュー!!】青春直下の恋模様【短編集】

第49章 死にたがり女子高生と変態男子高校生(及川徹)前編


「悩みのない人間なんていないデショ。バカにはバカなりの悩みが、優等生には優等生なりの悩みがあるんだよ」

「でも先輩は、悩んでるようには見えません」

海を見ながらそう言うと、悩んでるさ、と楽しそうな声が聞こえた。「でもね、俺にはチームのみんながいるんだ。俺のことを信じてくれる奴らがいて、俺には信じられる奴らがいる。だから俺は怖くない。全力でサーブが打てるし、全ての女の子たちに愛情を振り撒いていられる」

「女の子関係なくないですか」

思わず突っ込むと、「関係あるある!」と私の腰に手が回された。

「俺は女の子はみんな好きだけどさ、それよりもずっとずっとバレーとチームのみんなが好きなんだ。そのせいで俺は、いっつも女の子たちからフラれまくってる」

「えっ、先輩がフラれるんですか?」

「そうだよ。酷いよね。バレーと私どっちが大事なの?って聞いてきてさ、もちろんバレーだよって言った瞬間ビンタされんの。挙句の果てには傷ついたとか勝手に言ってさ、くだらない噂まで流しはじめるんだ」

ふふふ、とくすぐったそうに笑う及川徹を見て、ぽかんと口を開けてしまった。



ひょっとしてこの人、私が聞いていたほど悪い人ではないかもしれない。

この人は、女心を弄ぶ悪い男なんかじゃなくて、ただの素直で馬鹿で女好きな人ってだけかもしれない。



「他人の口から出た言葉なんかで、俺のことを評価しないでよ」


私と目が合った彼は、にっこり笑って「なまえちゃんが俺のことを信じてくれるなら、俺もなまえちゃんのことを信じるよ」と言った。



「………先輩は、私のことを知ってたんですか?」

何もかも見透かしているような彼の言葉に驚いて尋ねると、「うん?1年生のみょうじなまえちゃんデショ?」と不思議そうな顔をされた。

「そうじゃなくて、昨日まで、私のことを知ってましたか?」

「知らないよ。今朝初めて名前を聞いたんだもの。でも知ってても知らなくても関係ないよ!キミはもう昨日のキミとは違うんだから!ご覧よ、こんなに綺麗になっちゃって!」

それから、私の耳に唇を寄せて、ふぅっと息を吹きかけた。突然のことにびっくりして両手で耳を押さえると、わ、初々しい!と整った目元が嬉しそうに歪んだ。
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