第47章 いつかの夢のパヴァーヌが(菅原孝支)※
みょうじなまえは同じクラスのはずなのに、同い年のどの女子よりも大人っぽいと思う。
というか、大人の男の影が見える。
鞄にもスマホにも、何もストラップは付けないで、持ち物は黒で統一してるのに、
手帳だけがはっとするほど鮮やかな赤なのは、本当に彼女の趣味なのだろうか。
たまに制服のブレザーからタバコの香りがする度に、昨日の放課後にカラオケに行ったからだと言うのは本当だろうか。
髪だってそう。
決して染めないままでいるのは、誰かの好みに合わせてるんじゃないのかな。
なまえはいつも、他の女子と同じ顔して授業を受けているけれど、
学校では見せない、俺の知らない顔があるんじゃないのかな。
俺の知らない大人の人と、一緒にベッドに潜り込んで、
白いシーツの上で乱れた黒髪がよく映えて、
何も身に纏わない白い身体の上で、華奢な金のネックレスだけが鎖骨の窪みで不思議な線を描いてる。
(純粋そうな顔してるのにな……)