第46章 2万5000分の1のキミへ(月島蛍)
「今度、好きな味だけ集めた文を書いてよ」
いつの間にかしていたキスを止めて、月島がなまえにそう言った。「どんな風になるのかな」
「月島くんさ、それでうまいこと素敵な詩になるとでも思ってるの?」
私もね、前にやったことあるんだ。となまえが笑った。「意味のわからない単語の羅列になったよ」
「別にいいよ。意味わかんなくても」
「ほんとに?」
「うん。ほんと」
そしてまた唇を合わせた。溢れ出てきた気持ちが、繋いだ手を通って彼女の気持ちと交わって、絡めた舌からまた自分に戻ってきてるようだった。
2人の間を、想いがぐるぐる巡っていた。
「ほんとにいいの?」
「しつこいよ」
「だって、意味のわからない文章って、読んでて不安になっちゃうよ。私のこと、病気だと思わないで」
「思わないよ。思うわけないじゃん」
キミの一番好きな味にしよう。読ませてよ。僕に。
「それでさ、もしその、なまえの好きな味の中に、”蛍”って文字が入ってたらさ、」
「………入ってたら?」
「キミに好きって、言ってもいいかな」
泣きそうななまえの顔を両手で包んで、小さな声でそう尋ねると、うん、と聞こえたような気がした。
END
*次ページ、あとがきあります*