第46章 2万5000分の1のキミへ(月島蛍)
「私のおすすめの、柿本人麻呂ちゃんを紹介してあげるね」
なまえが月島の肩に頭を乗せて、本の最初あたりを開いた。そして、ゆっくり読み上げた。
あしびきの 山鳥(やまどり)の尾の しだり尾の
長々し夜を ひとりかも寝む
「完璧だね。グリルチキンのトマトソース煮込み」
「これさ、長い夜が寂しいなって意味の歌だよ」
本を持つなまえの左手に自分の手を重ねて、月島が笑った。「しかも全然甘くない料理だし」
「知ってるよ。授業でやったもんね。だけど私にとっては、中2のクリスマスに食べた味」
本を閉じたなまえが、月島の右手に指を絡めた。
「なまえにとって、4時間目の国語の時間は天国だね」
「地獄だよ。お腹は膨れないもん。それに、美味しい味ばっかりじゃないから。いきなり、靴底みたいな味するときもあるし」
「それ、ほんとのことなら最悪だ」
「ほんとだよ。ほんと」
嬉しそうに笑うなまえに、月島はどんどん尋ねていく。
本を読みながら食事をしたらどうなるの?
いちばん美味しい数式はどれ?
気になる人の名前は?りんごあめは好き?
ねぇ、今度さ、