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【ハイキュー!!】青春直下の恋模様【短編集】

第46章 2万5000分の1のキミへ(月島蛍)


「ほたるだから?」


次の日の朝、窓の外を見ているなまえに尋ねた。
閉じられた窓の向こう側で、雨が静かに降っていた。



「ん?」

「夏の虫でしょ。ほたるって。りんごあめは、夏祭りで売られてる、から、」


連想、したのかなって。


そう言うと、確かに……と芯のない呟きだけが宙に浮かんだ。



「でも月島くん、ホタルじゃないでしょう。名前」

「ケイ、だけど」

「それなら、関係ないよ」



じゃあ尚更、なんでりんごあめなのさ。


月島の質問には答えずに、彼女は黙って窓を見ていた。



















「夏の夜の、湿った空気の匂い?」

「違うよ」





「お囃子の音?」

「音?音は、しない」





「夏祭りの提灯が、月の光と同じ色をしてるから?」

「月島くんって、結構ロマンチックなこと言うね」

「はぐらかさないでよ」





ねえ、

りんごあめってその発想、



一体どこからやってきたわけ?




















「いい加減、教えてよ」
4日目の朝、痺れを切らしてなまえに尋ねた。「なんで僕の名前が、りんごあめなの」


なまえはいつものように窓の外を見ていたけれど、ふと気が付いたように月島を見た。



「月島くんに言っても、わからないと思う」

「その台詞は前にも聞いた」

「気になるの?」

「………………少しね」


「そっか」
素直にならない月島に、なまえが少し笑顔を見せた。「いいよ。じゃあ、教えてあげるよ」


そう言って机の中からノートを取り出して、適当なページを開いた。等間隔の罫線を無視して、” 月 島 蛍 ”の3文字を書き込んでいく。


月島が見ているその前で、間隔の広い文字の上を、綺麗な指がなぞっていった。



「月は水あめ、島はジューシー、蛍の文字は甘酸っぱい」
1文字ずつ順番に、なまえは単語を割り当てた。「だから、りんごあめ」




「…………」





それが彼女の答えの全てだった。

言われた通り、月島には理解できないことだった。







だけど、その1文字1文字に単語を割り当てるその動作。


その動作に、ピンとくるものがあった。








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