第45章 11.17 HAPPY BIRTHDAY!!(黒尾鉄朗)
腕を押し出して手を離すと、勢いのついたドアは大きく開いた。ドアノブが手の届かないところへ行ってしまって、右手は宙に取り残された。
なあ黒尾、と後ろで落ち込む友人に、夕陽を見ながら話しかけた。「好きな子の前でテンパっちゃう気持ちはわかるよ。だけど、素直になれなきゃダメだろ」
振り返ると、長く伸びた自分の影が黒尾の背中に被さっていた。目に焼き付いた夕陽の残像が、紫色になって赤いジャージの上に浮かんでいる。
「お前さ、一体みょうじとどうなりたいわけ?」
「………………」
「どうしてやったらいいかわかんないんだよ、俺も」
ごめんな。
そう言おうとして前に向き直った時、目に飛び込んできた外の景色にはっと息を呑んだ。
アレって……いや、でも……
目を細める。"もしかして" が "間違いない" に変わった瞬間、頭の奥に入り込んだ夕陽の光が、脳の中でぱっとひらめいた気がした。
「……なぁ、おい」
小さくなっていくそれを見失わないよう目をこらしながら、背後の男に囁いた。「黒尾、」と呼びかけると「んー?」と暗い声が返ってくる。
「そこから動くな」
「へ?」
「一歩も動くなよ。いいな!?」
早口でそう指示して、俺は鞄を放り投げて駆け出した。
夕陽に向かって小さくなっていく、彼女の影を目指して。
「みょうじ!!!!」
「へ?……ぎゃ!!!」
「待て!逃げんじゃねぇ!」
全速力で迫る俺を見て、なまえは驚いて駆け出した。くそっ!と悪態をついて地面を蹴る。まるでリレーのバトン繋ぎのように、彼女の手首を掴んで引っ張った。
「こっちに来い!!」
「えぇ!?」
「いいから!走れ!!!」
「えええぇぇぇぇ!!」
来たばかりの道を引き返す。初速全開で駆け出すと、彼女が後ろでつんのめった感じがした。それでも無理矢理走ろうとした。
「待って夜久!コケそう!腕がもげる!!」
「うるせぇ!」
「なになになに!?こわいこわいこわい!!!」
パニックになっているなまえに、「まだ捨ててないよな!?」と前を見ながら大声で聞いた。後ろに流れていく景色の中で、「何を!?」と叫ぶ声がした。何を?じゃねえよ、馬鹿。
「プレゼントだよ!!!!」