第45章 11.17 HAPPY BIRTHDAY!!(黒尾鉄朗)
男子トイレのドアから出てきたのは、案の定黒尾だった。
「えっ、ばっ、あ、なまえ……!?」
完全に不意打ちを食らった黒尾は、目の前に現れたなまえを見て背筋をしゃきんと伸ばして固まった。もしも尻尾が生えていたなら、ピーン!と真っ直ぐ伸びていていることだろう。人間と目が合って驚く野良猫みたいに。
「……あ、えと………」
鞄を両手で抱きしめるなまえの背中が、いつもより小さく見えた。
「……!?!?」
一方混乱している黒尾は、何も言えずに狼狽えている。
そんな2人を教室の扉に隠れて見守っていた俺は、頑張れ、と拳を強く握りしめた。どっちでもいい。どっちでもいいから、一歩踏み出してくれ。
「「……………!!」」
だけど願い叶わず、ヘタれな2人は無言のまま、何故か別々の方向に歩き出してしまった。おいなんでだよ、と心の中で突っ込んだ。
おかしいだろ。思いっきり見つめ合ってたんだから、何か一言くらい交わせよ。
俺の目の前を、俯いた黒尾が無言で通り過ぎて行く。待てよ、と声をかけたら、ビクッと大きな身体が跳ねた。
「18歳の鉄朗クンはなんだって?」
キレ気味にそう尋ねたら、俺、夕方の16時に生まれたんだよ、と黒尾が遠くを見ながら呟いた。
「だから正確にはまだ17歳で……「うるせぇ!!」」
問答無用で蹴りを入れてやった。本当にもう2人きりになるチャンスはないんだぞ。あーもう馬鹿馬鹿馬鹿。