第44章 惚れてしまえばあばたもえくぼ(灰羽リエーフ)
『あぁ〜!クロ先輩!!!短距離連射はやめてえええぇぇぇ!!』
ゲームをしながら叫ぶリエーフの姿が目に浮かぶ。うるさいよりも可愛いと思ってしまうのは、やっぱり自分が恋人だからなのだろうか。
リエーフは、ロシア人ハーフという特殊な血の流れに生まれたせいなのか、素直で、とっても良い子だ。他人に対して悪意を抱かないし、悪戯に人を傷付けたりもしない。まあ、その”悪意のない言葉の暴力”こそが一番タチが悪いものなのだけれど。(ちなみにその暴力は、主に夜久さんの身長に対して振り下ろされている。)
そんなリエーフの性格を綺麗な言葉で表すとしたら、竹を割ったような性格、と言うのだろう。けれど、恋人という特別な立場の私から敢えて言わせてもらうとするなら「愛すべきおバカさん」と呼んであげたい。身体が大きい分、いろいろと大雑把。思い立ったらすぐ行動。やりたいことは全部やっちゃう。
タイミング悪い時に電話しちゃって悪いなぁ、と思いながらも、楽しそうにゲームをするリエーフの声を聞いているだけでなんだか安心できた。通話を切らないで、しばらく耳を傾ける。
私はいま布団で眠りにつこうとしているのに、電話の向こうの彼は明るい部屋で大声あげて笑っているのだ。なんだか不思議な感じ。
まぶたを閉じていると、耳元のスマホから『え?……あ、うぅ、』と呻き声が聞こえてきた。
『いや、でもあと1戦だけ…………ほ、ホントですか、それ…………わ、かりました………オヤスミナサイ』
プツン、と小さく聞こえていたゲームの音が消えた。それから、『なまえ先輩、』と気まずそうなリエーフの声。
「何、どうかしたの?」
『や、なんか、怒られちゃいました。彼女ほっといてゲームしてんじゃねぇ、って』
「そんな……私は別に平気だったのに。ごめんね。もっと遊びたかったでしょ」
『そ、れは別に、いいですけど……』
うぅん、と悩ましげな声がした。『どうかしたんですか?こんな時間に』
「……なんか、寂しくなっちゃって」
『サビシクナッチャッテ?』
私の言葉が予想外だったのか、変な片言でおうむ返しされた。