第42章 男女別々放課後青春トークのすゝめ(縁下力)※
「え、いや、あの……」
あまりのショックに固まっていると、田中の口から「やっぱ一度は憧れるよな。彼女のコスプレ」なんて恐ろしい台詞が飛び出してきた。
「セーラー服も着てほしいよなぁ」
「メイド服とか」
「猫耳も外せない」
「そんで朝飯とか作ってくれるの」
「分かる。ほらぁ、起きなさーいってベッドまで持ってきてくれんだよな」
「いいなそれ。そんで、あーんって食べさせてほしい」
「でも究極のコスプレって言やぁ、やっぱりアレだよな」
「「「「裸エプロン!!!」」」」
思い思いの方向に人差し指をビシッと向ける4人。自分の顔が引きつったのがわかった。
【なまえside】
(わわ、私、そんな尽くせる女じゃないです!!!!)
顔面蒼白で固まる縁下に負けず劣らず、自分の額からも滝のような冷や汗が流れる。何?男子っていつもそんな会話してるの?どういうこと?縁下も私にそれを求めてるの!?嘘でしょ!?無理!!ヤダ!でも別れたくない!!
呼吸が乱れて、酸素の回らない頭に「やっぱさー」と親友たちの会話が響いた。
「彼氏にしたい人と結婚したい人って違うよねー」
「わかるー。なんっつーか、旦那さんにするなら刺激的な人より、優しい人がいいよね」
「優しい人!!!」
その単語に思わず食い付いた。「それだよ!優しい人!」
立ち上がりかけた私の肩を、テーブルに座る4人が一斉に押さえ込んだ。
「落ち着けなまえ、急にどうした」
「いや、私の彼氏ね、すっごい優しいんだ。滅多に怒らないの!」
「突然のノロケ!」
「そう!ほんと理想の彼氏なの!あのね、私のワガママも、しょうがないなぁって聞いてくれるの!」
「確かに、男嫌いのなまえが付き合えるなんてよっぽどいい人なんだろうと思うよ」
「でしょでしょ!マジ一生ついて行きます!みたいな!」
「へー、じゃあ将来安心だね」
隣に座る友達が、いつの間に頼んだのかパフェのチェリーを口に放り込んだ。「結婚式には呼んでよね」
「けけけ、けっこん!?」
ガシャンと食器がぶつかる音と共に声を出したのは私じゃなくて縁下だった。