第42章 男女別々放課後青春トークのすゝめ(縁下力)※
【縁下side】
(えっ、えっ、あれダメだったの?俺最低だった?マジ!?)
スプーンを持つ手がカタカタと震えた。ドリアは半分も減ってないけど、もはや食欲なんてゼロに近い。血の気が引いていく俺を見ながら「でも、そうかぁ」と成田が感慨深げに呟いた。
「縁下もとうとう卒業かぁ。どうt「やめて!口に出して言わないで!!」」
ガタッと立ち上がりかけたところに、「そういえばさ」と木下が入り込んできた。「俺、前に1回ちらっと縁下の彼女見たことあるけど、結構レベル高かったぞ」
「えっ、いつ見たんだよ」
「先月。駅前で一緒に歩いてた」
「マジで!?」
(全然気づかなかった……)
「おい、可愛かったのか、その子」
真剣な顔で尋ねる西谷に、「うーん」と木下は首を捻った。
「顔は覚えてねぇけど、巨乳だった」
「マジか。さすがだな力。有言実行か」
「馬っ鹿!それ一番言っちゃダメなやつ!!!」
西谷の口を左手で塞いで叫ぶと、ミシッと嫌な音がして思わず口を噤んだ。恐る恐る視線をズラすと、なまえの右手に握られたフォークがありえない角度で反り返っていた。
(あわわわわ、●※□♯≒〜〜〜〜〜〜!!!)
きゃいきゃい桃色に騒ぐ隣のテーブルの中、彼女だけがどす黒いオーラを放っている。
「ごごご、ごめんなさい!」
「は?何突然謝ってんだよ、縁下」
「なんでもない!なんでもなくないけど、とにかくごめん!!」
「はぁ?」
混乱している田中に「違うんだよ!」と必死に掴みかかった。「俺、彼女のことが好きなんだ!」
「おいおい、俺に言ってもしょうがないだろ……」
「いや、聞いてくれ、すっごい良い子なんだ。幸せなんだよ、俺」
「お、おう……そりゃよかった」
「優しいし、笑った顔とか本当可愛いんだよ。天使みたいに」
「天使」
「そう、天使」
「じゃあナース服とかも似合うのか!?」
空気を斜め上にしか読めない西谷が、目を輝かせて聞いてきた。「は?」と声が出るけれど「まじかー」「レベル高ぇー」という成田と木下の声にかき消される。