第42章 男女別々放課後青春トークのすゝめ(縁下力)※
【なまえside】
(えっ、ちょ、うええぇぇぇ!?何で!?何で言ったの!?)
ありえない、と彼を見ると、怒っているのか目を合わせてくれない。いや、だって、確かに私も悪いけど、女子の世界と男子の世界は違うでしょーよ!女子高舐めんな!
「どこで?」
「彼女の部屋」
「「羨ましー!!」」
(ダメだあれ。完全に開き直っちゃってるよ……)
隣のはしゃぎ声に頭痛までしてくる。「やっぱ押し倒したの!?ガッ、て!!」とよくわからない質問まで飛び出す始末で、あぁ、だから男子は嫌なんだ。
「ガッ…って…いや……うぅん……」
「こう、勢いでいくわけ?」
「勢い、っていうのかな……?」
流石に弱ったのか、縁下がこちらに視線を寄越してくる。知らないわよ、自分でなんとかしなさいよ、とお返しにそっぽを向けば、「まあ、そんな感じかなぁ」なんて逃げ腰の回答。嘘つくなよ、と心の中で突っ込んだ。
『可愛い……ほんと可愛い』『ねえ、いいでしょ?だめ?』って耳元で囁いて、ぐずぐずになったところを頂いたくせに。
(ふーん、あっ、そう。)
自分でもやけに醒めてしまって、パスタを口に詰め込んでいると、「ねーねーなまえさぁん」と目の前の友達が聞いてくる。「初めてはどこだったわけ?」
「自分の部屋!」
乱暴に返すと、うそー!と悲鳴に近い声が上がった。
「初めてはホテルがいいって言ってたじゃん!自分の部屋とか死んでも嫌だって!」
「え?」
顔を上げると、視界の端っこで、え?とこちらを向く縁下が見えた。
「私、そんな乙女なこと言ったっけ?」
「言ったよー!覚えてるもん。去年文化祭の片付けしながら言ってた」
「う、ん……?確かに言った記憶あるかも……」
(でもそれずっと前だし……ってゆーかやばいな。聞こえてるな、これ)
「なんで許しちゃったのー?」と聞かれて「それは……」と言い淀む。うーん、なんて言ったら傷付けないかな。
「別に嫌じゃなかったから、かなぁ」
しかし「雰囲気に流されたってやつか」とまさかの切り返し。「はー!?最低じゃんそいつ」「なまえ、そんな男やめたほうがいいよ」「別れたら?」と口々に非難されてしまった。
(やべ、答え方ミスった)
視界の端に見えたのは恋人の顔。
(あちゃー。やっちまった)