第42章 男女別々放課後青春トークのすゝめ(縁下力)※
突き刺さるなまえの視線に、変な汗が背中を伝っていく。「そういうのは、ここで話すことじゃない……だろ」とどきまぎしながら言えば「そうだぞ、田中」と何も知らない成田が助け舟を出してくれた。
「飯食ってる時に、そういう話題出すなよな」
「はぁー?だって気になるだろ」
「田中にとっては未知の世界だからな」
「んんん?いい度胸ですね木下さぁん」
「あっ、ちょ待っ」
田中が木下の襟を掴んだと同時に「で、さっきの続き!」と隣のテーブルから女子の声がして「何の話?」となまえの視線が俺から逸れた。
(よかった、助かった……)
ほっと息を吐いてスプーンを口に運ぶ。けれど「とぼけんじゃないわよー」の次に聞こえてきた言葉に、俺も盛大にむせることになった。
「シたんでしょ?彼と」
「ぶはっ!」
飲み込みかけていたドリアが変な所に入った。「お?ちからどうした?大丈夫か?」と西谷に背中をバシバシ叩かれて、余計に咳が止まらなくなる。
(え?どういうこと?)
なまえを見ると、動揺しているのか「え、や……ここファミレスだよ?」と言いながら目が泳ぎまくっている。そんな彼女に「何言ってんのよ!」と隣の女子が肩を叩いた。
「教室で堂々と自慢してたくせに、今更恥ずかしいとか言わないの!」
(は?)
「っつーか、私たちそれを聞きにここに来たんでしょーが」
「そうそう。奢ってやったら詳しく話してやるって言ったの、なまえでしょ」
(はああぁぁぁ!?)
なんで言い触らしてんの!?お前の恥じらいは食欲に負けるの!?
唖然とする俺の視線に気が付いたのか、逃げ場を無くしたなまえは小刻みに振動を始めた。なんだよお前。一昔前のケータイかよ。
「で、どうだったワケよー?縁下?」
隣の女子の声は耳に届かないのか、撃沈している木下に肘を乗せ、田中が顔を近づけてきた。ヤった?ヤった?としつこく追求されて、普段あんまり怒らない自分でも、なんだかムカムカしてしまう。
(なまえがその気なら、俺だって言ってやるからな)
よくないとわかっていたけれど、わざとなまえに聞こえるように語気を強めて言ってしまった。
「ヤったけど?先週の土曜に」