第40章 さよなら私。ごめんね、私。(影山飛雄)
「私寝起きだから超恥ずかしいの!!」
「お、おう。悪い」
「まだメイクもしてないし!」
「はぁ……」
「二重も作ってないし、カラコンも入れてないし!っつーか、ここまで喋る必要ないよね!?」
どうしよう!ドン引きされたかな!?死にたい!!!!
「ごめん!」と叫んで雑誌を抱えて後ろを向いた。なんで、なんでなんで、と頭の中でぐるぐる回る。
あーもう、最悪だよ。せっかく毎朝早起きして頑張ってたのに、これじゃ意味ないじゃん。
可愛いねって言われるために頑張ってたのに。
振り向いてもらえるように、頑張ってたのに。
一生懸命メイクも勉強して、長い巻き髪で顔を小さくみせて、できるだけ可愛くなりたいって思ってたのに。何もしなくても元から可愛い子たちと、対等に立ちたいって思ってたのに。
これじゃあ、落差にがっかりされるだけだよね。
「……ごめん、早くどっか行って」
下を向いたまま、落とした声は震えていた。「影山に見られたくないの」
あーもう、
私の顔が可愛かったら、こんなことにならないのに。
生まれたときから二重瞼だったら、家の前を歩く影山に、窓から手を振ることだって、きっとできたのに。
「………」
「………」
「………みょうじ?」
「………」
「おい、みょうじ、な、」
「………」
「………泣いてんの、か?」
「泣いてるよ……」
ぽろぽろと零れる涙を両手で受け止めていたら、後ろから、あー、とかえぇと、とか居心地が悪そうな呻き声が聞こえてきた。