第40章 さよなら私。ごめんね、私。(影山飛雄)
「眩しっ!」
上りきった太陽の光が目に刺さる。
朝の澄み渡った空気の中で、欠伸をしながら郵便受けの蓋を開けた。
雑誌を引っ張りだして、ついでに新聞も取り出した、その時、
「あの、すんません」
突然後ろから話し掛けられた。はい?と振り返ったら、そこに立っていたのはさっき通っていったはずの影山だった。
「あの、ココらへんで落し物したみたいで……って、」
アレ?と影山が私の顔を覗きこんできた。やばい!と反射的に手元の新聞紙と雑誌で顔を隠す。
「お前……」
「いや!人違いです!」
え!?なんで?なんでいるの!?
あわわわわわヤバイ。ヤバイぞ!
「アノ……鍵、落ちてなかった……デシタカ?」
影山は私だと確証が持てないのか、ぎこちなく尋ねながらジロジロと顔を見ようとしてくる。それに対して思いっきり顔を背けて「や、知らないです」と早口で突っぱねた。
やばいやばいやばいやばい、私ってバレたかな?
なんでよりによってこんな……まだ寝癖も直してないし、すっぴんで二重も作ってないし、サンダルだし……ってかパジャマ!!まだパジャマだし!!
「あの、」
「見てないです!」
「……チャリの鍵なんスけど」
「だから、知らないです!!!」
頼むから早くどっか行ってよ!!!
「そう、スか……?すみませんした……って、ゆーか、」
歯切れ悪く言った影山が、チラ、と郵便受けの横の表札を確認して、また私に視線を戻した。
「……みょうじ?」
「……………………はい」
バレた。
「……お前、顔、違うくね?」
馬鹿正直にそう言った影山が、性懲りもなく顔を覗きこんでこようとしたので「見ないでください!」と彼の顔に雑誌を押し当てた。うぐ!っと声が聞こえた。