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【ハイキュー!!】青春直下の恋模様【短編集】

第40章 さよなら私。ごめんね、私。(影山飛雄)


平凡な女の子の私は、いつも朝の5時半に起きる。

華の女子高生にしては早いって?いやいやいや、女子高生だから早起きするんだよ。


朝起きて、顔を洗ってタオルで拭いて、鏡に映るヘアバンドをした自分に溜め息を吐く。ニキビの悩みは中学でなくなったけれど、野暮ったい一重瞼だけはずっと私の悩みの種だ。鏡に映る憂鬱な顔をできるだけ見ないように、化粧水で肌を整える。

ぱっちり二重の子が羨ましい。私は糊状の液体で瞼をくっつけて、偽物の二重を作って学校へ行くのだ。

度の入っていない黒色のカラコンを入れて、先生にバレないようにメイクもして。それでようやく友達に会える。それでようやく可愛いねって言ってもらえる。生まれた時から瞼の上に綺麗に折りたたまれた線が刻まれてるあの子たちは、私みたいな努力を一度もしたことがないんだろうな。たった1本の瞼の線が、きっと人生を左右する運命の線でもあるのだ。

あー、ずるいずるい。嫌いだよ。なんも苦労せずに元から顔が可愛い子なんて。でも一番嫌いなのは、性格ブスなこの私だ。





まだ日の昇らないうちに、薄暗い自室に戻ってじっとしていた。夜明け前は深夜とは違った優しさがある。ピンと張り詰めた空気に包まれていたら、知らないうちに船を漕いでいた。

意識を戻したのは止め損ねて鳴った6時のアラーム。やばいやばい、と急いで窓際のベッドに飛びのった。


柔らかい布団を押しのけて、カーテンに手をかけて、

白い光が漏れる小さな隙間に、そっと顔を近付けた。







窓の外、空はもう青白くなり始めている。



東の空の遥か上、星々は消えかかっていて、その下の地平線辺りが、ぼうっと明るくなっている。



日の出だ。



じりじりと太陽が顔を出すと、街の気温がどんどん上昇していく。
灰色に見えていた遠くの家の屋根が、綺麗な赤色に染まり始める。


明るい朝日は、いつも私の心を洗い流してくれる。



私の嫌いな私をまっさらにして、見てくれなんてどうでもいいじゃないか、なんて、深い愛情で包んでくれる。






でも、私が早起きする理由は、この景色を見たいからじゃないんだ。




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