第36章 みんなで共同生活!(烏野1年生ズ)
「ーーーーーという訳で、月島、DVD借りてきて」
にっこり笑って彼の肩を叩くと、ムッとした顔をしながらも「なんか観たいのあるワケ?」と質問が飛んできた。彼が反抗しない理由は、雨の日は映画を観るんだ、と言い出した日向の意向に従ってみんなでじゃんけんをしたからである。どんなひねくれ者でも素直に命令に従ってくれるのだからじゃんけんは素晴らしい。今度から揉めた時は全部コレで決めようかな。
アクション系が観たい!と言う日向に乗っかって、私も恋愛系!と声と張る。山口は感動モノがいいって言うし、影山は何故か動物の出てくる映画が観たいと言い出した。ここでもみんなバラバラだ。
じゃあ適当に何枚か借りてくるよ、と溜息混じりの月島に、お菓子とジュースもよろしくね!とみんなから徴収した生活費が入っている封筒を渡したら「こんなことをしてるから、毎月赤字になるんだね」と完全部外者のような顔でお札を抜き出したので、いやいやいや、キミも共犯ですから、と突っ込んでおいた。
「じゃあ行ってくるケド……その代わりリビング掃除しておいてね」
「わかってるってば!」
「ホントにわかってんの?」
「ツッキー、気を付けて!」
私と山口が並んでにこにこと玄関で見送ると、月島はなんとも言えないような顔をして出て行った。バタン、と扉が閉まった後、少しの沈黙の後に「行った?」と日向が小さい声で尋ねてくる。
「行ったみたいだね」
「じゃあ、早速……!」
私達4人は一斉にリビングのテレビに駆け寄った。リサイクルショップで衝動買いした5人掛けの長いソファに身体を沈める。
「ゲームまで強いって、ホント月島はムカつくよなー」
1Pのコントローラーはいつも日向のもの。その通りですね、と同意しながら私は4Pを手に取った。
「でも、ツッキーも悪い人じゃないよ。一番家事をやってくれるのはツッキーだし」と悲しそうな顔をする山口は3Pで、「……確かに、飯は旨い」と複雑そうな顔をする影山は2P。
わかってるよ。みんな本当は月島のことは嫌いじゃない。彼の淹れるミルクティーはみんな大好きだ。だけどそれとこれとは別だよ?どんなゲームも1位になって、挙句の果てに「しょうがないなあ。そんなにお願いするんなら、手、抜いてあげようか?」なんて笑顔で言われる身にもなってくれよ。誰だってそんな奴とゲームなんてしたくないよ。