第36章 みんなで共同生活!(烏野1年生ズ)
やっぱりさー、と口を開いたら無心でパンケーキを食べていた4人が一斉に私を見た。
「家事の当番制やめない?絶対うまくいってないよ」
「うまくいってないのは日向となまえが忘れるからだろ」
「んだと影山!」
フォークを上向きに握りしめて怒る日向に「ごめん、コレに限っては影山の言うとおりだわ」と私は反省の言葉をかけた。だけど日向の怒りは収まらない。
「影山はさ!仕事にムラがありすぎんだよ!掃除はできるのに飯はマズイ!」
「あ゛ぁ?てめぇこそ朝から晩までうるせーんだよ何人分の騒音発生させたら気が済むんだよコラ」
「ちょっと2人とも、やめなさいよ」
「そうそう、僕達の部屋にまで誰かさんの煩い声が聞こえて眠れないんだよねぇ。『日向ボゲエコラァ』ってさ」
「やめて月島、それ火に油」
「だからさぁ!」
日向が叫ぶ。「俺は山口と相部屋がよかった!」
「っ!?」
我関せずで食事を続けていた山口が驚いて喉を詰まらせた。慌ててミルクティーを流し込む彼に、日向が続ける。
「山口、俺と相部屋になって!」
「ちょっと待ってよ。そしたら僕が影山なんかと相部屋になっちゃうじゃん。勘弁して」
「”なんか”ってなんだよコラ!俺だって御免だコラァ!!」
「俺は別に誰とでもいいけど、できるならツッキーとがいいかな……慣れてるし」
あぁ、また始まったよ。
私は頭を抱えて項垂れた。一緒に住むと決まった時からわかっていた。この4人は壊滅的に共同生活に向いていない。
プライバシーという言葉を知らない日向
どこまでも我流を貫き通す影山
どういう才能か、わざと人を怒らせる月島
マシなのは山口だけだけど、彼ものんびり屋で他人の気持ちに疎い部分がある。
当然だけれどみんなが口を揃えて山口と相部屋を希望する訳で、ローテーションを回した後で結局一番トラブルの少なかったこの組み合わせに落ち着いたのだけれど、喧嘩が絶えないことに変わりはない。
まあでもこんなの高校の頃からだったんだから、今更改善するほうが無理だけどね!
私はさっぱりと諦めて、ところでさ!と口を開いた。また4人が一斉に私を見る。
「今日はみんなお休みなんだし、せっかくだからお出かけしようよ!」
だけど、返ってきたのは沈黙。
「そう言われても……」
困惑した山口が、窓の外を振り返って言った。
「雨、すごいよ」