第36章 みんなで共同生活!(烏野1年生ズ)
それから私は無言でパンケーキを焼き続けた。フライパンが2つあったとしても5人分でしかも4人は男子だ。それなりの量を黙々と焼いているところに、月島の鍋から甘い香りが漂ってきた。
私のしまい忘れた牛乳。それと水を1:1で弱火にかけて、沸騰する直前にお湯で開かせておいた茶葉を入れる。くるりと片手で鍋を回すその手つきは、普段の彼からは信じられないくらいに優しい。その眼差しをロイヤルミルクティーなんかじゃなくて私達人間に向けてくれたら、きっともっと世界は平和になるはず、なんて言ったら「は?」と冷たい視線が返ってくるだけだろうからお口はチャック。私のしまい忘れた蜂蜜を鍋に投入して蓋を閉めた月島は、無言のままパンケーキが積まれた皿を持ってリビングへと消えていった。
「おっはよー月島!なまえ!」
入れ違いにキッチンに入ってきたのは日向だった。「うひょー!いい匂い!!」と目を輝かせる日向に、残り1人のお寝坊さんを起こしてくるように依頼をすると、わかった!!と元気に返事をして走っていった。そして大きな声が届いてくる。
「やまぐちーーー!!!!
起きろーーーーーーー!!!」
それからダンッ!という音と、ぎゃああぁ!!!と叫ぶ声。
あぁ、目に浮かぶなぁ。山口の布団に思いっきりダイブする日向。
クスクスと独りで笑っていたら、いつの間にかお風呂から上がっていた影山が「何笑ってんだ?」と気味悪そうに尋ねる声が後ろから聞こえてきた。
「なんでもないよ」
そう、この日常は私にとっていつものこと。なんでもないなんでもない。