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【ハイキュー!!】青春直下の恋模様【短編集】

第4章 HONEY BEAT(及川徹)


「それでさ、その時岩ちゃんが何て言ったと思う?グズ川だよ!?酷くない!?」

「そうね」

「そんでそんで、それを見て矢巾も『ドブ川先輩、早くミーティングしましょう』とかノってくるし。俺、こんなんじゃ後輩から尊敬してもらえないじゃん!って思っちゃって」

「そうね」

喋り続ける及川に対して、なまえは本を読みながら適当に相槌を打つ。

2人は図書室にいた。
なまえは図書委員だ。といっても、 高校の図書室を利用する人なんて滅多にいない。だから、なまえはこの時間のほとんどを本を読んで過ごす。

一方の及川は、外から見えないようにカウンターの裏側、つまりなまえの座っている椅子の、横の床に座って、日頃の愚痴をぶちまけ続ける。

毎週木曜、放課後1時間。
これを続けてもう3年目だ。

1年のとき、たまたま2人は同じクラスになり、たまたま人数あわせのじゃんけんに負けて同じ図書委員になり、放課後貸し出しの仕事を任された。

上述の通り暇なので、代わりにたくさん話をした。主に及川が一方的に話すだけだったが。

進級し、及川も図書委員から解放されたのだが、未だにこうやって通いつめては、なまえと話をしている。

彼に言わせてみれば、『ここなら追っかけの女子も、こわーい岩ちゃんも来ない。ここは俺だけのサンクチュアリだよー』だそうだ。


「及川くんって天才だね、」
昼間の女子の台詞を繰り返してみる。

「...なに?」

「別に」なまえは本を読みながら答えた。「あなたが嫌がりそうな言い方だなって思って」

及川はカウンターを背もたれにして、なまえと反対側を向いていた。

「あの女の子たちは、俺のどこを見てるんだろうね」

「さあ。顔じゃない?」

「ふーん」
及川は興味なさそうに目を閉じた。
相変わらず整った顔をしている。彼は高校生に見えないほど大人びて見えるときもあるし、小学生のようにあどけなく見えるときもある。

「俺は、」及川がゆっくりと目を開けた。「自分の成果を才能って言葉で片付けられるのが嫌いなんだ」

この話は何度も聞いた。

「まるで俺がなにもしないでバレーが上手くなったような言い方じゃん。
今まで続けてきた練習が、してもしなくても一緒だったって言われてるみたいでむかつくんだ」

ピンと空気が張りつめた。
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