第29章 みんなでシェアハウス(ごちゃ混ぜ3年生ズ)前編
「俺の靴下片っぽなくなったー!!!」
そう叫んで顔を出したのは体育学部体育学科、204号室の木兎光太郎。
当然のように入り浸っているなまえの姿を発見し「うっす!」と右手を上げたが、音楽を聞きながら集中している彼女から返事はない。
「無視かよ……」
「なまえちゃんって、周りが騒ぐと集中しだすタイプの子だよね」
横目で彼女を見ながら及川が言った。
「自習時間にフザケて、休み時間に勉強する奴だろ?いるいる」
黒尾も同意してから、「時に木兎よ」と声かけた。
「なんだ?」
「お前は、愛とはなんだと思う?」
「『女子とヤること!』」
ぐっ!とガッツポーズをして即答する木兎に、「ダメだコイツ話になんねぇ」「さすが体育学部スポーツ推薦……」と苦笑が漏れる。
「つーか、及川、この前貸したルールブック返してくれよ」
木兎は呆れられていることも気づかずに右手を突き出した。
「あーごめん。俺の机の上にあるから勝手に取ってって」
「うーい」
返事をして、リビングに面した101号室の扉を開けた。そして大声で叫んだ。
「なんかすっげーいい匂いする!!!!」
「でっしょー!?誕生日にアロマつきの加湿器もらったの!」
顔を輝かせてコタツから叫び返す及川に「女々しいな」と黒尾が呟いた。いいでしょ、別に!と言い返そうとしたところに、及川と隣の部屋のドアが開く。
「おっかしーなぁ……」
102号室と札が下がるドアから出てきた人は医学部医学科、菅原孝支。
「どうかしたか?」
「俺の白衣、見当たらないんだ。明日必要なのに」
菅原は頭を掻きながら及川と黒尾に尋ねた。「知らない?」
2人で黙って首を振る。ついでに「今度俺とお医者さんごっこしてください」と黒尾が冗談を言えば「今度ナースの卵たちと合コンセッティングしてください」と及川もかぶせてきた。
「お前らほんとそればっかだな!」
顔を僅かに赤らめる医学生に、なぁ、と黒尾が準備されていた質問をぶつける。
「お前は、愛とは何だと思う?」