第3章 幼さ(影山飛雄) ※
「...なんかすげー疲れた。今日はもう帰る。」
乱された室内を軽く片付けて、影山は用具室のドアを開けた。こもった室内に夜のつめたい空気が入り込んでくる。
「あれ?中学のリベンジしなくていいの?」
外されたブラを直しながら、なまえは拍子抜けして聞いた。
「また泣かれたら嫌だからな。大体、こんな埃っぽいとこで初めてなんてお前がかわいそうだわ」
行くぞ、と素っ気なく歩き出す影山の背中をみて、あ、ばれてたんだ、と気付いた。鼻の奥がツンとしてくる。
ふざけていたけど、本当は怖かったのだ。中学の時、影山に半分無理矢理押し倒されたとき以来、なまえは身体を求められるのに怯えていた。
あの時最後までいかなかったものの、なまえを傷つけてしまったことを影山も後悔していたのだろう。だから今までずっと我慢しようとしてくれた、待とうとしてくれていた。
「影山っ」
なまえは思わず目の前の背中に抱きついた。
「ありがとう。私、いつか平気になるように努力するよ」
ごめんね、と呟いたなまえに、影山も悪かったな、と小さく返した。