第3章 幼さ(影山飛雄) ※
二人で並んで歩きながら、ん、となまえが左手を差し出すと、影山も無言で指を絡ませてくる。
こういうとき、なまえはあぁ、大事にされてるんだなぁ、としみじみ思う。
「ね、影山」
なまえはにこにこと笑顔を向けて言った。
「 バレー、頑張ってね」
「? 何だ急に」
当たり前だろ、と影山は眉を潜めて答えた。
本人は気付いていないみたいだが、影山は高校に入ってからとっても優しくなった。
コート上に誰も味方がいなかった中学の頃、影山はなまえに対しても支配的で、乱暴な恋愛を押し付けていた。
今の影山がこんなに穏やかで優しくなったのも、烏野で良いメンバーに出会い、相手を気遣うことを覚えたからだと、なまえはわかっていた。
バレーをしている影山は格好いい。だから、高校バレー引退のその時まで、必死こいてボールを追いかけて、どんどん格好良く、優しくなってほしい。そしたらーーーー
「そしたら、飛びきり優しい影山とロマンチックなセックスしたいな!」
「セッ...!?」
天使のような笑顔のなまえから飛び出した衝撃発言に、影山は一瞬白目を向いた。
「...なまえ、頼むから最低限の恥じらいだけは忘れないでくれ」
「はは、気を付けまーす!」
なまえはふざけて敬礼をしてみせた。確かに、影山が飛びきり優しく格好良くなるならば、私も釣り合うようにおしとやかな女性にならなければなるまい。
いまはまだ遠い未来だけど、いつかきっと、烏野高校で誰もが羨む美男美女のカップルになってやろう!
「その時までは、お預けだね!飛雄ちゃん!」
繋いだ手をぶんぶんと振り回しながら、なまえは上機嫌に鼻唄を歌った。
END