第27章 グータッチでご挨拶(澤村大地)※
「なまえ、お前大地ばっか見てないで少しは授業聞けよ」
休み時間に後ろの席の菅原が声をかけてきた。「真横をずっと見てるなんておかしいぞ。目立ってる」と話す菅原の身体のラインを舐めるように見て、うんうん、と独りで頷く。彼もとても良い。澤村と絡むとなお良い。この2人と同じクラスになれるなんて、私は最高に恵まれている。
「おいなまえ、聞いてるか?」
「え、なんの話?」
「だーかーら!大地が言ってたぞ。席が隣になってからなまえにガン見されて緊張するって。むしろ怖いってさ」
「そんなこと言われても、見ちゃうんだもん」
そう言ってから、今も教室の中に澤村の姿を探している自分に気がついた。「魅力的な澤村のほうにも責任があると思うな」
菅原は一瞬きょとんとした顔をして、それからお腹を抱えて大笑いした。
「お前、ほんっと大地のこと好きなー」
頭をガシガシと撫でられる。役得役得。
そう。隠さずに話すが私は澤村のことが4月から気になっている。
好きなのかもしれない。いや、好きだ。相当好きだ。
「大地に聞いてやろうか?なまえのこと、どう思ってるのか」
「いいよ。そんなことしなくても」
「遠慮すんなって」
「いいってば」
何か企んでいそうな菅原の顔を見て、どっちみち止めても聞くんだろうな、と思った。
だから敢えて頼むことにした。
「私の事をどう思ってるかは聞かなくてもいいよ」
あぁ、まただ。また私、彼のことを探してる。
「その代わり、澤村に言っといて」
「何を?」
「私が澤村のこと好きだってこと」