第27章 グータッチでご挨拶(澤村大地)※
6月1日、衣替え。
黒に包まれていた男子達が学ランを脱ぎ捨て、眩しいYシャツへと変わる日。
肩幅の広い背中の白が目に染みる。
いいなぁ。男子高校生は良い。非常に良い。すこぶる良い。
私は授業中にも関わらずニヤける顔を抑えられないでいた。
まくった袖から見える筋肉質な腕をタダで拝めるなんて、高校生とはなんて有難い職業なんだろう。叶うことなら、私は一生高校生のままでいたい。そうだ、将来の夢は男子高の教師にしよう。そうしよう。
片手で頬杖をつきながら、隣の席の澤村を見た。私の最近のイチ推し。熱心に板書をする彼を見て、かっこいいなぁ、と溜息が漏れる。派手さはないけど、力のこもったその目元がかっこいい。精悍な彼の腰回りに抱きつきたくなる衝動を何度耐えただろうか。
ノートの上を走って、たまに大きな手の中でくるりと回されるシャーペン。神よ、私を澤村大地のシャーペンにしてくれ給えと天に願う。まさか人生で工業製品になりたいと思う日が来ようとは。でもなりたい。澤村の所有物になって弄ばれたい。彼の匂いを嗅いでみたい。その首筋にうっすらと滲む汗を舐め取りたい。私は変態でしょうか。悪い気はしません。
熱い視線に気が付いたのか、澤村がちらりと私を見た。すぐに逸らされる。しばらくしてまたこちらを見る。
彼は気まずそうに咳払いを1つして椅子に座り直した。今更姿勢を正しても遅いっつーの。あ、その椅子になるのもいいな。Yシャツにも、机にも、もう全てになりたい。どれでもいい。ちょっとそこを代わってくれ。いやむしろ代われ。代わってください。