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【ハイキュー!!】青春直下の恋模様【短編集】

第26章 Hey, my love. (黒尾鉄朗)


俺は彼女のことを知っている。研磨と同じ学年で、人見知りのあいつと普通に会話をしていたから興味を持った。一度だけ声を掛けたことがある。綺麗に無視された。なんて声を掛けたのか覚えていないが、研磨に「クロ、ナンパ下手すぎ」と言われたことははっきりと覚えている。というわけで、俺は彼女のことを知っている。心の中で子猫チャンと勝手に呼んでいる。本当の名前はみょうじなまえという名前らしいが、あえて尊敬と親しみの気持ちを込めて子猫チャンと勝手に呼んでいる。

片や彼女は俺の名前を知らないだろう。同じ学校で学年が1つ上だということぐらいは知ってるかもしれない。けれど会話はしたことがない。


何分乗っていただろうか。子猫チャンが立ち上がった。俺の存在には気が付かずに反対側のドアから降りていく。俺も降りた。改札を抜けて、雑多な街に繰り出す。


そこは一度も降りたことの無い駅だった。喫茶と雑貨の店が立ち並ぶ細い道を、尻尾をピンと伸ばす三毛猫のように彼女は澄まして歩いて行く。

さて、いつ声をかけようか、
どんな言葉を浴びせたら驚くだろうか、

考えながら後をつける。



人混みの中でも彼女は目立って見つけやすい。

ノルディック柄の真っ赤なポンチョ。

そしてその少し後ろをポケットに手を突っ込んでニヤニヤしながらついていく俺。

まるで赤ずきんと狼だな。くつくつと喉が鳴った。



子猫チャンが立ち止まった。食べ歩き用の惣菜を売っている店の軒先の看板をじっと見つめている。それから何かを買ってまた歩き出す。

俺もその店の前で立ち止まって、店員に言った。

「さっきの彼女と同じやつ、ください」

手渡されたのはメンチカツだった。女子力の欠片も無い。思わず笑いが零れた。


一口食べて前を見ると、少し先でまた彼女が何か買っていた。いいねぇ。食い意地の張った女の子は大好きだ。すぐに後をつけて同じものを買う。今度はたい焼きだった。



両手の食べ物を片付けて、2回曲がり角を曲がった後、子猫チャンが店に入った。後に続いてビニールのカーテンをくぐると独特の匂いが鼻をつく。あぁ、古着屋ですか、と考えて、派手な装飾の中に紛れた彼女の姿を探した。

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