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【ハイキュー!!】青春直下の恋模様【短編集】

第26章 Hey, my love. (黒尾鉄朗)


今日は祝日。

部活は休み。

都内の偉い教師が偉い研究会を開くらしい。会場になった俺の学校は本日生徒立入禁止。

そのため朝から時間と体力を持て余していた。昼飯を食べてすぐに電車に乗った。

学校の最寄り駅から電車で1本。到着したるは渋谷駅。

別に何かしようというわけではなく、辿り着いた先がそこだった。いや、本当のことを言うと昨日クラスの女子に言われた「鉄朗の私服ってシンプルだけどお洒落を面倒臭がってるだけだよね。身長高くて救われたね」という言葉が引っかかっているからかもしれない。髪の毛が寝癖だと修学旅行でバレて以来、俺はクラスではそういうキャラとしていじられ続けている。だから服を買いにきた。そう、今日は服を買いに来たのだ。


改札を出て、ハチ公前広場へ。年がら年中人でごった返しているその中を突っ切ってスクランブル交差点へと足を進める。


信号待ちをして、青になると同時に歩き出した。真正面ビル2階の喫茶店からカメラを構える外国人が見える。多方向から一斉に人が攻め寄せる光景が珍しいのだろう。大量の人生の交錯。さながら小さな戦だ。




向こうから来る大勢の人波に紛れて、見知った顔がチラリと視界に入った。気がした。無意識に二度見すると、彼女もこちらを見た。



「あ、」




目があった。


まるで生まれる前から、何月何日何時何分にここで出会うと決まっていたみたいに、雑踏の中でカチリと視線が噛み合った。


そいつはすぐに視線を逸らした。人の波に押されて、向こう岸へと流されていく。


俺はくるりと向きを変えた。今日は服は買わない。目的が変わった。代わりに赤い服の子猫チャンを追いかける日にしよう。


その子は人混みを器用にすり抜けていく。俺も黙ってそれに続く。彼女との間に5人ほど挟んで長いエスカレーターで上へ。そのまま改札の中へ。


するすると吸い寄せられるように同じ各駅停車の車両に乗って、子猫チャンは座席の真ん中へ。俺はその真横のドア付近に立った。熱心にスマホを眺めるその睫毛を一瞥して、俺は自分でも機嫌が良いことに気がついた。申し分のない祝日だ。

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