第25章 確かに君が好きだった(夜久衛輔)
「なまえ、お前何の競技に出るの?」
「私?出ないよ」
「出ないなんてありなのかよ」
「クラスの話し合いの時に手を挙げなければどの競技にもでなくて済む」
そんな簡単な話ではないだろう。そう思ったけれど、彼女には何か裏ワザがあるのかもしれない。こいつはそんな奴だ。
「夜久の試合、見たよ。リエーフは酷いね」
見られていたのか、と少し恥ずかしくなる。「あいつは今日の部活でシゴくから大丈夫」と言ってから、試合に負けなければなまえとここで2人きりになることもなかったのだな、と思って複雑な気持ちになった。この状況に感謝したいがリエーフには感謝したくない。
「夜久は黒尾と同じ5組なんだっけ?」なまえが聞いた。
「そう。あいつはバスケに出てる。相変わらずやらしいプレーばっかだぜ」
「それじゃあ、うちのクラスと当たったら主将vs副主将だね」
「海もバスケなのか?」
「そうだよ。あとさっき研磨に会ったけど、あの子ドッジボールだってさ」
「早々に外野に行ってサボる気だな」
「見え見えだよね」
「山本はなんだろうな」
「あの子は確か……ソフトボールだったかな。犬岡と同じって言ってたから」
「へー。福永と芝山は?」
「ちょっと!」
なまえが笑い出した。「マネージャーだからって、全員の競技把握してる訳じゃないんだからね!」
その笑顔を見て、自分の口元も自然に緩む。
「なまえはいつも楽しそうでいいな」
「楽しいよ、私、いま毎日が楽しい。人生が楽しい」
そんなキミといると俺も楽しい。なんて言いたいけど、そんなキャラじゃないから言えない。