第25章 確かに君が好きだった(夜久衛輔)
さぁさぁさぁ今日は都立音駒高等学校クラスマッチ!
ご存知でしょうか、クラスマッチというイベントを。
言ってしまえば体育祭。クラスを1つのチームとして学年入り乱れ競技を行う年に一度の学校行事。
まさに運動部員の晴れ舞台。ただし自分の部活でやってる競技には出場禁止。
俺こと夜久衛輔も、3年5組の看板背負って意気揚々とバドミントンに出場しました。
リベロで鍛えたこの瞬発力、シャトルは地面に落とさねぇぜ!と3回戦まで駒を進めたところまではよかったものの、次の相手はなんと後輩、灰羽リエーフ。
「あっ、先輩じゃないですか!」
そんなムカつく笑顔のロシア人ハーフ。
ご存知でしょうか、彼の身長194cm。俺の身長?知りたきゃ勝手に測れ。
そんなわけで、日頃のレシーブ練の恨みを散々シャトルにぶつけられた俺は、不本意ながら惨敗を喫することになった。俺の身長をあざ笑うかのように高めのスマッシュばっかり打ちやがって。あいつは今日の部活で後悔することだろう。その魂抜けるまでレシーブ練だ。
予想外に午前中で出番の終わってしまった俺は、やることもなかったのでお気に入りの場所に行くことにした。
校舎の裏側。誰にも秘密の静かな場所。
けれどそこにも予想外に先客がいた。男子バレー部マネージャーみょうじなまえ。俺と同じ3年生で、俺の好きな人。
「あっ、やっくんじゃないですか!」
スマホを弄る手を止めてそう言ったなまえの言葉がリエーフとかぶる。少しだけムッとしたけれど、隣に座って彼女に話しかける。「この場所、知ってたのか?」
「うん。私のお気に入りの場所」
「俺の秘密の場所だったのに」
「そうなんだ。よく今までかち合わなかったもんだ」
そう言ってけらけらと笑った。この場所は理科室の窓の外側で、日当たりもいいし生徒のざわめきも聞こえない。しんと静まり返ってて、うるさい体育館とはまるで別世界のような気さえする。
「今日あっついねー。まだ6月なのに」
なまえが上を見上げた。青色のクラスTシャツを着ているけれど、下は制服のスカート。頭の上には大きなお団子で、どう見ても運動する格好じゃない。