第23章 野うさぎたちは目を開けて眠る(東峰旭)※
「え……?」
「本音は、どう思ってるの?」
「…………」
「俺はなまえに何言われても、嫌いにならないよ」
「…………友達にね、言われたの。付き合って、もう6ヶ月も経つのに手を出してこないのはおかしいって。私のこと、妹みたいにしかみれてないんじゃないかって」
絞り出すようにそう言った彼女は、堰を切ったようにしゃくりあげた。
「ごめんね、私、身長ないし胸も小さいし……子供っぽくて、魅力なくてごめんね。旭くんとえっちしたくないわけじゃないけど、でもすごく怖いの。でもね、全然そんな雰囲気にならないのもすごく悲しいの…………私のこと、大切にしてくれてるってわかってるよ。でも…………わけわかんないこと言ってごめん。私、純粋じゃなくてごめんね、ごめん」
「……………」
あぁ、自分でも知らないうちに傷付けてしまっていた、と思った。恥ずかしがり屋の彼女がこの手の話を切り出すのは本当に勇気の要る行為だったはずだ。彼女のほうから言わせてしまって、申し訳ない。
「ごめんね、言いたかったのはそれだけ。おやすみ」
そう言って背中を向けてしまった。なぁ、と呼びかけてみるが返事はない。腕を伸ばして彼女を引き寄せようとしたら、抵抗されたけど弱すぎて抵抗にもならない。あっという間に彼女は俺に背を向けた状態でまた腕の中に収まった。
「話してくれてありがとう」
なまえの髪の毛に唇を寄せて言った。「不安にさせちゃってごめん。次は俺が正直に話すね」
それから目を閉じて息をゆっくり吸った。
「俺がオナニーするときはいつもなまえのこと考えてる」
顔から火が出るかと思った。空気が止まった気がした。たぶんそれはなまえも同じで、顔が真っ赤になってるはずだ。でも、彼女が勇気を出して打ち明けてくれたのだから、俺もそうしなければならないと思った。
「今日もコンドーム持ってきてる。なまえとそういうことしたいと思ってる。けど、」
パジャマの中に手を滑り込ませて、彼女の肌に直接触れた。なまえの背中から首から頭にかけて、一気に鳥肌が立ったのがわかった。