第23章 野うさぎたちは目を開けて眠る(東峰旭)※
「おやすみ、」
そう言うと、おやすみと穏やかに返ってくる言葉。言い合える相手がいるだけでどうしようもなく幸せだ。願わくは、彼女も同じ気持ちでいて欲しい。そう思って目を閉じた。
彼女と一夜を共にすると決まったとき、イコールそういうことをするのかもしれない、なんていかがわしいことを考えてもいたのだけれど、変な気も起きないみたいで安心した。よかった、俺ほんとにこの子のこと好きなんだなって思った。
けれど、
「...あの、旭くん」
遠慮気味に胸元のTシャツを握られる。
「なに?」
「...…なんでもない」
彼女がなにか言いたそうにしている。こんなこと珍しい。彼女は素直な分、嘘をつくのが下手だ。
「なにか言いたいことでもあるの?」
「…………」
「言ってみてよ」
「………………旭くん、私のこと好き?」
「好きだよ」
「じゃあ、なんで……っ」
彼女が声を詰まらせた。あ、なんか泣きそうになっているぞ、なぜだ。と考えてすぐに理由はわかった。
「別に俺は身体目当てでなまえと付き合ってる訳じゃないから」
そういうと彼女は布団の中に潜ってしまった。俺の胸に顔を押し付けて、震えていて、あ、泣いてる、と思った。
「……な、泣かないで、ごめん」
「だって、旭くん、なんでいつも私の考えてることわかるの?」
「なまえがわかりやすいんだよ」
そう、彼女は本当に分かりやすい。鈍いと言われる俺でさえわかるのだから、これで気がつかない奴がいたらそいつは相当な馬鹿だ。
「なまえ、は、俺とそういうことしたいの?」
「…………私、旭くんのこと好き。旭くんにだったら何されてもいいよ」
好きな子にそんなことを言われて、何もしない男がいるだろうか。けれど彼女は泣きながら震えていて、明らかに無理してる。「本音は?」と聞いてみた。