第20章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午後の部
「うーん、今日も楽しかったね!」
ショーステージの出口でなまえは伸びをしながら隣の田中に言った。
「そうっスね!全員順番回ったことですし、そろそろ帰りますか!」
「だね!」
そう言って2人でにやにやと縁下を見ると彼も穏やかに微笑んで「そうですね、帰りましょうか」というものだから、からかったこっちが慌ててしまった。それを見て縁下は笑う。敵わないな、となまえは思った。
彼は目立つほうじゃない。特に個性の強いバレー部の中に紛れたらいるのかいないのか時々わらかなくなる。けれど、1対1になると一番厄介な相手は実は彼なのではないだろうかと密かに考えてたりもする。
「して、何にするのかもう決めたのか?」田中が尋ねた。
「うん。観覧車にする」
そう言って縁下はこれまた敷地のはじにあるそれを指さした。
「おい力お前!」突然西谷が掴みかかった。「それはダメだろ!」
「え、ダメなの?」縁下は驚いたように言った。
「ダメだ!」
田中も声を揃える。「17分もなまえさんと密室で二人きりなんだぞ!みんな暗黙の了解で避けてただろ」
「そんな、知らないよ」縁下は困ったようになまえを見た。
「暗黙の了解だったか?」大地が山口に聞いた。
「さあ…なんとなく最後の締めかなっては思ってましたけど」と山口。
「わ、私は乗りたいな!」
不穏な空気になまえはわざと明るい声を出した。「乗ろうよ、観覧車」
その言葉に、縁下が「ですって」と言うと、田中も西谷も静かに手を離した。
解放された彼は衣服の乱れを直して、笑みを浮かべた。彼の笑顔は柔らかい。柔らかいけれど、いつも何か含みがあるのを感じる。