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【ハイキュー!!】青春直下の恋模様【短編集】

第20章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午後の部


マーシーとは果たしてどちらだっただろうか。忘れていたが水面に顔を出したのはイルカの方だった。身体を垂直にして半分ほど水から出し、バランスをとるように前後に揺れている。

『このボールをマーシーくんに向かって優しく投げてください!外しても大丈夫!彼は水の中ならどこでも拾いに行けますよ!』

そう言って影山に手渡されたのは柔らかそうな白いボール。

影山は両手でそれを持って、じいっと見つめた。重さや弾力を確かめるように片手で弾ませて、それからいつもの癖で頭上でトスを始めた。

影山!それバレーボールじゃねぇぞー!なんて野次を飛ばされて、うぐっ!と謎の呻き声を上げている。何なんだこの子は。私もちょっと恥ずかしくなってきた。

『あはは、面白い彼氏さんですね』
お姉さんも笑っている。『準備運動はお済みですか?それではマーシーくんにボールを投げてください』

影山がキュッ、と水槽のほうを向いた。1.5m程離れたイルカのマーシーを真剣な顔で見つめている。

彼はボールを真上に上げた。確かめるようにもう一度上げて、それから静かにトスを放った。

ボールはふわりと上がって、イルカの元に飛ぶ。ぱくり、とそれを咥えたマーシーは、後ろに反動をつけて影山に投げ返した。それをまたトスで返す。

『おぉ!素晴らしい!拍手ー!!』
お姉さんが目を丸くして言った。観客から拍手が起こる。

『すごいですねー。ラリーが続くんですねぇ』

感心している最中も、影山たちは黙ってボールを投げ合っていた。天才的な彼のトスはドンピシャで狙った場所へ落ちるのだからラリーなんて難しくない。マーシーくんは先程から全くその場を動いていない。

もういいから、となまえが突っ込んでようやくボールが止まった。


『それでは次は彼女さんとアシカのサンデーくんの出番です!』

こちらに立ってください、と誘導される。胸程の高さのガラスを挟んだ反対側には低い台が置いてあり、アシカが器用にそれを上った。なまえのすぐ目の前に黒い鼻先が伸びてくる。噛み付かれそうで思わず後ずさると、お姉さんがアシカの顔を片手でぐいと押さえた。

『サンデーくんから、ほっぺにチューのプレゼントです!』

「えぇ!?」

なまえはびっくりして笑ってしまった。ずりぃ!と西谷の声がした気がするが、きっと赤の他人だろう。


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