第20章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午後の部
「わわわ、高い!」
半分ほどの高さに来た時に、山口が叫んだ。「高い!」となまえも叫ぶ。「高いとこはキライだ!」
高度が上がるにつれて、遊園地全体が見渡せるようになった。「いい眺めだなぁ」「そうですね」なんて呑気な大地、月島とは正反対に、山口となまえは、たかい!こわい!やばい!と叫び続ける。
いやいやいや、彼普通に怖がってるじゃないの!となまえは心の中で突っ込んだ。先ほど月島が山口は臆病ではない的なことを言ったが、あれは嘘だったのか!?
こわい!こわい!と山口と口を揃えて、ふと、言うほどこわくないぞ、と思った。
確かに半端無く怖いのだけれど、楽しい。
山口を見ると、彼も引きつった顔をしているが笑顔だった。
そうか、これが普通の反応か、と思った。怖がって当たり前なのか。
こんな状況で世間話をしている大地と月島のほうが異常なのだ。やっと気がついた。
ガタン!と大きな音がして上昇が止まった。真上を見ると、てっぺんまで到着していた。
遊園地の向こうの、住宅地の向こうの雑木林のずうっと向こうの山の麓まで景色が広がる。
我らが烏野高校はどこら辺だろうか。風がびゅうびゅうと吹き荒ぶ音がうるさかった。
背後の柱から、空気が吹き出す音が聞こえた。生憎足を踏ん張るのに手頃な場所がなかったので、代わりにお腹に息を吸い込んだ。為す術がないのならせめて思いきり叫ぼう。
ガタン!とまた音がして、それから静かに落下が始まった。
青い山々が一気に視界の上へ消える。
「きゃあああぁぁぁああぁぁ!!!」
「わああああぁああぁぁぁあ!!!」
嫌な浮遊感に悲鳴をあげると、山口の声が重なった。
あっという間に下まで落ちて、再び上昇を始めた。重力に逆らってかかる圧力に、またトーンの違う悲鳴が出る。先程の3分の2ほどの高さまで上って、また落ちる。
また絶叫。また山口とハモる。
それを全部で3回繰り返した。