第20章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午後の部
「日向、これなんかどう?」
「いいですね!でも、こっちも可愛いですよ」
「ほんとだぁ、可愛い可愛い」
棚に並んだ文房具を手に取り、2人できゃっきゃとはしゃいだ。はしゃぎながら、なまえは涙ぐんだ。
あぁ、平和だ。今日イチの平和な時間がここにある。
日向みたいに優しいお兄ちゃんがいて、夏ちゃんは幸せだなぁ……
うんうん、と1人でしみじみ頷く。
7人目は日向だと聞いて、どんな破天荒なものに乗せられるかと心配したが、意外にも彼は妹へのお土産選びの付き添いを願い出てきた。
「遊園地に行くって言ったら、自分も連れてってくれって泣いちゃって」
照れたように言う彼の姿はいじらしく、なまえがその場で全面協力を誓ったほどだ。可愛い。なんて可愛く心優しい後輩なんだろう。
「そりゃあ、お兄ちゃんだけ遊んでたらずるいよねぇ。お土産くらい欲しいよねぇ。あ、お菓子もいいんじゃない?クッキー!」
なまえは上機嫌にあれこれと日向に見せた。ちなみに、むさ苦しい他の連中はもう1度ジェットコースターに乗ってくるらしい。喜ばしいことだ。
「でもすみません、なまえ先輩、乗り物乗りたかったですよね?」
「そんなことないよ!日向こそ、他にも乗りたかったでしょう?」
「いや、俺は乗り物酔いしやすいから…」
視線を下げた彼を見て、あぁ、と思い出す。そういえばこの子には移動中のバスで戻した過去があったな。
「じゃあ日向は絶叫系苦手なんだ?なんか意外」
「意外ですかね……あ、先輩見てくださいこれ!」
彼が手に取ったのは、この遊園地のマスコットキャラのパペット人形。
「可愛くないですか!?」
そう言って日向は人形に右手を突っ込んだ。元気なパンダがなまえの目の前に現れる。
「お土産、これにしようかな」
日向が満面の笑みでパペットを動かした。「先輩、こんにちは」
パンダがペコリとお辞儀する。小さな両手がぴょこぴょこと動いた。
か……
可愛いいいいぃぃぃ!!!
なまえは両手で顔を覆って悶えた。
なんなの!?なんなのこの子!
可愛すぎる!パンダも!日向も!本当にこの子が私の後輩でいいの!?恵まれすぎてない私!?