第20章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午後の部
足を置く場所を確認して1歩踏み出す。
次の足場を探していると、目の前をレーザーが掠めた。頭を下げて潜り抜ける。
静かに、ゆっくり、確実に。
じりじりと進んでいくうちに、どんどん姿勢が低くなって窮屈になる。部屋の2/3ほど進んだところで、先に抜けたらしき田中が「っっしゃ!」と跳ねた。
あの子のポテンシャルすごいな、と感心する。
「なまえさん、もうちょっとですよ!」
その声に気を取られたのがまずかった。
田中がボタンに手を乗せているのを確認したせいで、なまえの長い髪が揺れてレーザーに当たってしまった。
ブシュウウ、と両壁から煙が吹き出してサイレンが鳴る。
やっちまった!!
「ごめん田中!」
身体を起こして叫んだなまえに、「動かないでください!」と田中が切迫した様子で言った。「まだ時間あります!落ち着いて!」
そうか、ここでパニックになるからアウトになるのか。
なまえはハッとして体勢を整えようとした。
「と、っと…」
片足を上げて、足の置き場を探す。なんとか場所を見つけてバランスを取ると、右足と左足の縦軸が揃って、綱渡りのような姿勢になってしまった。
「田中、もう進めないよ!」
なまえが悲鳴をあげた。ボタンまではあともうちょっとなのに、次に足の置けそうな場所が見当たらなかった。
「ジャンプしてください!」
田中が大声で言った。彼と自分との距離を見るが、少しばかり遠い。
「無理!」
「無理じゃないっす!跳べます!」
田中が右手をぐい、と突き出した。
「俺を信じて!!」
なんて劇的!
真剣な彼の表情に、ここが遊園地であることを突然思い出した。
ふ、と笑ってしまう。
「わかった!信じるよ!!」
そう叫んで田中の右手を掴むと、彼はなまえの手首を握り直した。
体重を後ろに掛ける。せーのっ!と言って思いっきり地面を蹴った。
同時に腕が引かれて、大きく前へと跳躍。緑の網を飛び越えた。
「うわっ!」
勢いがつきすぎて、前のめりに転びそうになる。それを田中が腕を引いて、身体を起き上がらせてくれた。