第20章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午後の部
「なるほどな」
扉が閉まるや否や、田中が口を開いた。
「あのくらいの幅なら、助走を思いきりつければロープ1本で渡りきれると思います。俺が奥のほうのロープで渡るんで、なまえさんもほぼ同時にスタートして、手前のロープで跳んでください。届かなかったら、俺が離したほうも使って」
「了解。ぶつかるといけないから、田中は右のボタンに向かって、私は左に向かって角度をつけて跳ぼう」
「うす」
「こらこら」
2人の会話を後ろで聞いていた大地が驚いて言った。「なまえは女の子なんだから、無茶して怪我すんなよ」
なまえはそっぽを向いて無視した。おい、と呼んでも聞こえない振りだ。
「全く…」
ため息を吐いたところに、『アウトー!』とスピーカーが叫んだ。
「みんな駄目なのかよ!ってかあいつら早いなぁ!さては西谷、ルール聞いてなかったな」
後ろの菅原が笑った。「これは田中たちも厳しいかも…ってあれ!?」
屈伸をしている田中を見て菅原が目を丸くした。
なまえも黙ってアキレス腱を伸ばしている。
「ちょっと!こいつら眼の色変わってるんだけど!そこまで本気か!」
菅原の突っ込みも無視して、なまえと田中は集中して扉を見つめた。
「それでは次のペア、どうぞ!」
カウントダウンが始まる。大きく息を吸った。
『スリー、』
助走のために重心を低く下げる。
『ツー、』
「いくよ、龍」
「合点承知!」
『ワン、』
『スタート!!!』
扉が開くと同時に地面を蹴った。
瞬発的に早く飛び出した田中が奥のロープに飛び付く。一瞬遅れてなまえが手前のロープに手を伸ばした頃には、彼はもう向こうの地面にダンッ!と足を付けていた。
後ろで覗いている大地たちが「おぉ、」と感嘆の声を漏らしたのが聞こえた。
なまえも左側のボタンに向かって飛び降り、2人でアイコンタクトをしてボタンを押す。
1st Mission Cleared!!
扉に文字が浮かんで、自動で左右に開いた。
「っしゃあ!次!!」
田中が叫んだ。
次の部屋は真っ白な部屋だった。部屋の中には大きな液晶画面と、その手前に電卓のような、数字の並んだキーがあるだけ。
自動扉の前の2つのボタンには檻がかけられており、押すことはできなさそうだ。