第20章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午後の部
なまえのその可愛らしい姿が、田中の心に火を灯した。
「俺の本気、出しちゃいましょうか?」
「出しちゃお!頑張っちゃお!」
そんな会話をしているうちに、メンバーの先頭に並んでいた日向、影山ペアの番が回ってきた。がんばれよー!と西谷が手を振ると、日向も笑顔でそれに応える。
『スリー、ツー、ワン…スタート!』
スピーカーのカウントダウンと同時に、入り口の自動ドアが開き、変人速攻コンビが飛び込んでいった。最後尾近くに並んでいるなまえからは、扉の向こうは見えない。
「…っブねぇ影山!ばか!」
「るせぇよ!!!お前こそ邪魔すんじゃねぇ!」
閉まるドアの間から聞こえる怒鳴り声に、(これはアカン……!)と全員が苦笑した。
『アウトー!』
やがて、予想通り駄目だった2人が出口から吐き出された。
「残念でしたお客様!また挑戦してくださいね!」
係員が声をかける中、日向がいじけた様子で「協力しないお前が悪いんだぞ!」と影山に詰め寄った。
「あぁ!?ドン臭いお前のせいだろが」
「2人ともやめろー」
列に並んでいて制止に入れない菅原の声だけが飛ぶ。彼は今日だけで何回いざこざを止めるのだろうか。止め方もどんどん適当になっている。
「そ、それでは次のペア、どうぞ!」
日向達が退いたのを確認して、係員が次の山口と月島に声をかけた。
2人が入り口の前に立つ。
「ツッキー、頑張ろうね!」
「はいはい」
『スタート!』
部屋の中へと入る2人を見送ると、「あいつら、意外にイケそうですね」と田中が話しかけてきた。
「そうだね…中はどんな感じなんだろ」
「看板には大袈裟なこと書いてたけど、結構子供騙しなんじゃないスか?」
「そうだといいけど」
「失礼いたします!」
簡単なルール説明をさせていただきます、と入り口横の係員が通る声で話し始めた。
「各部屋には、正面にミッションの内容が書かれています。それをクリアして、次の部屋へとお進みください。また、次の部屋へ繋がる自動扉の左右に、ボタンが2つ、設置されています。それをお二人で同時に押せば扉が開くので、忘れないようにしてください」
一礼した係員に、すんません!と西谷が右手を上げた。
「いま残り時間が一気に減ったんスけど、なんでですか?」