第19章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午前の部
一方なまえたちは、離れた窓際の席で揃ってオムライスを食していた。柔らかい日差しに包まれて、穏やかな気分になる。
「親子みたいだね」
夢見心地でなまえが言った。
「えっ、俺達?」
「違う。オムライス」
スプーンの先で卵をつついた。旭のオムライスはなまえのよりサイズが2つ分大きい。並べて見ると親子のように見えるのだ。
「確かに、親子みたいだな」
「可愛い」
「可愛いな」
「違う。旭が」
「え、俺?」
「そして今日の旭の服は、格好いい」
「あ、ありがとう」
「自分の外見に相応しい見せ方をちゃんとわかってるんだね」
「そうかな」
「うん。私、旭のセンス割と好きだよ」
「ありがとう」
「ただ中身は伴ってないけど」
「……」
ほら、すぐそうやって落ち込む。
なまえは、冗談だよごめん、と笑った。
「私は今のままの旭が好きだよ。泣いてる子供を心配する優しい旭が」
「……」
「変わらないでおくれよ、私のために」
「なまえは誰にでも、好きって、言うよな」
旭はオムライスを口に運びながら言った。
出し抜けにどうした、と驚く。
確かに日常で男女関係なく、好き、という単語は使う。なまえにとってそれは普通なことなのだけれど、傍から見れば違う風に捉える人もいるのだろう。菅原の軽口を咎める割に、自分も大して変わらないことをしているのかもしれない。
「やめたほうがいいかな?」
旭に聞いてみる。「言われてみれば、小悪魔みたいだよね」
「いや、やめなくてもいいよ。恋愛感情とは別ってみんなわかってるから…それに、なまえに好きって褒められると、すごく自信になる」
そう言いながらも彼の声は沈んでいる。
「旭、もしかしてさっきのスガとのやつにもやもやしてるの?」
尋ねると、「うっ!」と肩を跳ねさせた。「何でわかるんだよ!こわいよ!」
「私もあれは今考えると、ないわ、って思って」
さっきのスガとのやつ、というのは、付き合ってもいない男女が白日の下且つ衆人環視の中、ぐるりぐるりと回されながら偽りの告白を交わしたあれである。
「あれは、自分でもちょっとやりすぎたと思う。反省してる」
照れるなまえに、「やっぱり、なまえの中にもそういうラインがあるのか?」と旭が聞いた。