第19章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午前の部
フードコートの中はお昼のピークということもあり混雑していた。注文を受け取り、旭と並んで歩いていると「先輩!こっち!」と日向が人混みの中で跳ねているのが見えた。
排球男児によって占拠されているテーブルの前に立つ。
「あ、なまえさん!旭さんの次は俺っすから!楽しみにしててください!」
笑顔の田中に「期待しとく!」と返した後、全員に聞こえるように「私と旭は、あっちで食べるから」と言った。
「えっ何で!ですか?」日向が尋ねる。
「今までの4人だって、私と二人きりで楽しんだでしょう。旭も平等にしなきゃ!」
隣のエースにぴたりとくっつく。2人の持っていたトレイがぶつかった。
「お前、そういうとこほんと律儀な」大地が呆れた。
「マネージャーですから!」なまえはむんと胸を張った。「皆に平等の愛を。仲間思いじゃないメンバーには鉄槌を」
少しだけ沈黙が流れた。なまえさん、と影山が呟いた。
「もしかして、俺達が旭さんを助けなかったこと怒ってるんですか」
「もちろん」
「だから俺は気にしてないってば!」
旭が慌てて間に入った。「ほら、行こう」
「そうね。皆さん、良い昼食を」
なまえがひらりと右手を振った。「ってかスガ、七味かけすぎ」
そう言い放って旭と共に人混みの中へ消えていった。
「あいつ、これ見よがしに旭にくっつきやがって…!」
菅原が悔しそうに言った。彼の啜る蕎麦の汁は真っ赤に染まっている。
「これが、鉄槌になるんですか?」
日向が釈然としない様子でハンバーガーに齧りついた。
「少なくとも、野郎だらけのテーブルになまえさんがいない時点でちょっとした地獄」
そう言ったのは西谷で、鉄板焼きの料理を口に運んで、あちぃ!と叫んだ。
「はは、間違いないな」
好物のラーメンを前にした大地も、笑って同意した。