第19章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午前の部
ポールから手を離して、2人の空間を埋めるように後ろに下がった。彼の身体に寄りかかると「あの、ちょっと、」とぎこちなく声が降ってくる。
首を思い切り反らして大地を見上げた。表情を見られないように横を向いているが、耳まで真っ赤だ。彼の太ももにそろりと手を這わす。ますます狼狽して硬くなる身体。
思わずにやりと笑ってしまう。
「みんなー!ちゅーもーく!」
なまえは右手を挙げて大声で叫んだ。「澤村大地が顔真っ赤にして照れてまーす!!」
その声に、メンバーだけでなく他のお客までもが振り向く。
「お、おい!」
大地がなまえを叱りつけたが、時既に遅し。
「大地さん、なんスか、むっつりなのにウブなんすか」
なんて田中にからかわれて「ちがう!」と慌てる。
そんな大地を見て、なまえは形容し難い満足感を得ていた。
「なまえ、大地!」
前方の菅原がスマホを構えて振り返った。なまえが目の横でピースを作り、おどけて舌を出すと、ぱしゃり、とシャッター音が鳴る。
「スガ、後でその写真送っといて!」
「りょ!」
ひゅーひゅー、と2年に囃し立てられて、「あぁ、もう!」と項垂れる大地に、「残念だったなぁ!」と言って笑ってやった。
「付き合いの長い3年は、私を振り回すことはできないよ!」
何のためにマネージャーやってると思ってんのよ!
なんて、
笑って。
音楽が鳴り止むまで、公開処刑は続いた。