第19章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午前の部
なまえは嬉しさで胸を打たれて、ありがとう、と彼の手を握った。
「月島って、不器用なだけで本当はとてもいい子なんだね」
笑いかけると、ふいと目を逸らされた。それが照れ隠しであることはお見通しだ。
そして2人で出口へ向かい歩き出した。
光を遮る暗幕に手を伸ば……そうとしたところ、天井から人が逆さまに降ってきた。ズタズタの上半身が目の前で引っかかり、その人形の目が鼻先にぶつかる。
「に゛ゃーー!!!??」
悲鳴を上げて咄嗟に屈んで逃げた。
重たい暗幕を掻い潜って、外の生ぬるい気温の中へ飛び出す、
と、
「「「あっはははは!!!」」」
大爆笑に迎えられた。太陽に眩む目を細めると、先に出ていたみんなが笑い転げていた。
「ビビり過ぎだろ!なんだよ、に゛ゃーって!!」
西谷がお腹を抱えてこちらを指さしている。
「いや、でもあれはビックリしますよ」
一番最初に入った日向も少し青い顔で言った。「みんなすごい声出してたじゃないスか!」
「影山が一番面白かったよな。ファイティングポーズとってて」
「確かに!あれは本能で動いてた」
「まじうける」
口々に喋るいつものメンバーを見て、あぁ、戻ってこれた、と安心した。
「っていうか、お前らいつまで手握ってんだ」
旭に遠慮がちに言われて、「え?」と右手を見た。しっかりと繋がった手。そこから伸びる腕を辿ると、むすっとした顔の月島と目線がかち合う。彼も今気がついたようで、慌てて手が離れた。
自分の右手をまじまじと眺める。
最後、私、月島のこと忘れて置いていこうとしてた…
「よーし!じゃあ全員揃ったとこで次行きましょ!次!」
西谷がガッツポーズをして叫んだ。「次は誰です?」
「あ、俺だわ 」
大地がなまえの隣に並んで顔を覗き込んだ。「よろしくな……ってあれ?なまえ?」
月島は、私の手を最後まで離さないでいてくれたんだ…
ぼんやりと右手を見つめるなまえに、おーい、と大地が呼びかけた。
その声は靄の向こうの山の如く、遠くに霞んで耳には届かない。