第19章 みんなで遊園地(烏野逆ハー)午前の部
「というわけで、トップバッターは俺だぁぁ!!」
ビシィ!と効果音が出そうなほどの威勢の良さで、西谷が親指を胸に向けた。そんな彼に「よっ!斬り込み隊長!」なんて声が飛ぶ。
「そしてもちろん、乗るのはあれです!」
ズビシィ!と伸びた人差し指の延長線上には、この遊園地の中でも一番人気のアトラクション。ジェットコースター。
うん、予想通りだね。
なまえは至極冷静に遠くで荒らぶるコースターを眺めた。
私に拒否権はないからな。
【ルールその1.乗るアトラクションは1人ずつ順番に決めることができる】
「いきなりかぁ」
列に並びながら旭が心配そうに呟くと、菅原と大地が一斉にその背中を叩いた。
「へなちょこ、もっと堂々としろ」
「一発目からテンションガッとあげんべ!」
「痛いよ...」
そんな後続の様子を無言で見つめるなまえに、真後ろに並んでいた縁下が 大丈夫ですか? と声を掛けた。「絶叫系、苦手なんですか?」
「嫌いではないんだけど、」
なまえは顔をひきつらせて笑った。「ちょっと昔読んだ本を思い出しちゃって」
「本?」
小学校の頃に読んだ本なんだけどね、とその世代には有名なホラー作家の名前をあげた。「ジェットコースターが一番高いところで止まって、どんどん人が落ちていくの。最後の一人になるまでしがみついてなきゃ帰れないっていうお話」
「それは...怖いですね」
「でしょ」
「大丈夫っすよ!」
なまえの目の前、メンバーの最前列に並んでいた西谷が振り返った。「もしそうなったら、俺たち新聞に載れますよ!きっと!」
あぁ、西谷。君が羨ましいよ。
愛想笑いを返すと、突然轟音と絶叫が響いた。驚いて見上げると、コースターが勢いよく通過していった。
あれ?なんか、思ったより高くない?
なまえは心の中で焦った。
「ね、縁下、これめっちゃ角度えげつなくない?」
「そ、そうですね」
「なまえさん、さっきから力と話しすぎですよ!今は俺と乗る時間なんですから!」
「はいはいごめんない!」
なまえは声を荒げて答えた。
【ルールその2.アトラクションを指定した人は、同時になまえとペアで楽しむ権利も与えられる】である。
この規則、揉めない代わりに私が一番自由がないのね!