第44章 倒そう
はずだった。だが、彼は自力で目を覚ます。
そして考える
「その気になれば…今すぐにでも戻ることはできる。だがそれでは交代するだけだ。俺の中にもう1人が居座り続けることになる
元はと言えば、幼少期から続いた精神的負荷…自分の弱さが生んでしまったものとは言え、あまりいい気はしないな
もう一人の自分は勝利への権現化、もし敗北すれば勝利への義務が果たせなくなった時、その存在意義は消滅する
俺はただ…待てばいい、あいつらならば、必ず俺を倒してくれるだろう。もう仲間には戻れない
俺の犯した罪は、どちらにせよもう消えない。ならば、罪を背負って敵であり続ける方がずっといい」
そう言った彼は笑い、そのまま待っていた。しかしその時が来たのだ
黛の言葉に返事のない彼に「オイ…赤司?」と聞くと、彼はゆっくりと目を開けた
赤司
「(フッ…ダメだな、敗北の時まで好きにさせるつもりだったが…できの悪い弟をもったような気分だ。もうほとんど消えかかっている
だがいざ完全に消すとなると長時間代わりを任せすぎて情が移ってしまった。それに何より…)
監督、すみません…もうしばらく出してもらえませんか」
「…!?」
赤司
「(相手が黒子だったからかな、プレイしたいという衝動、勝ちたいという衝動が抑えきれない)
誰とは心外だな、俺は赤司征十郎に決まっているだろう」
そう言って彼は口元とに弧を描き笑った。彼の目の色は両目とも赤く、恐らく元に戻ったという事でいいのだろう
しかしそんなことを知らない根武谷は「出してくれって、赤司…さっきまでヨレヨレだったじゃねーか。大丈夫なんだろうな…!?」と問いかけ、赤司はそれに「あぁ…見苦しい姿を見せた。それについては悪いと思っている。すまない」と謝った
彼が謝ることは珍しいのか、彼らは目を見開いていた
赤司
「もう一度力を貸してほしい。誠凛に勝つために」
そう言った彼は誠凛ベンチを見ており、その後試合開始直後は彼ら、洛山ボールから開始された