第2章 #1 FALLING
「ナイン…」
「なんだ?」
一回、深呼吸をする。
「会いたくなかった」
「…だと思った」
「でもね、探してた」
今日だって、2人を探してた。
「部屋」
「え?」
「お前の部屋は、残してある」
昔、私が、私たちが住んでいたところ。
「へへ、それって、戻っていいってこと?」
「当たり前だろ」
「ありがとう。…ただいま?」
「…おかえり」
ポン、と頭に置かれた手は、昔とは違う。
昔は同じくらいだった手は大きくなって、男らしくなっていた。
「あ、いたいた」
「ツエルブ?」
ナインは私の頭から手をおろし、ツエルブに声をかけた。
「…全て予定通りか?」
「いいや。想定外がひとつ。三島リサ。見つかっちゃってさ」
三島リサ…聞き覚えがある。
他クラスだが、いじめられている。という噂だけ。
爆発音が鼓膜を揺らす。
「だからあいつ、置いてきちゃった。
ほっといても死ぬだろうけど、取りあえずくるリン預けてきた。
だからすぐ殺すこともできるし、助けることもできるよ。
燃え盛る炎の中からね」
「俺に、あの日の再現をさせようってのか?…あいつは仲間じゃない」
"燃え盛る炎"
"あの日"
忘れたい映像が、フラッシュバックする。
「わかってる。でも、いつまでも同じ夢におびえなくて済むかもよ」
ツエルブがどこかに電話している。
少し話し、ナインが代わる。
選択肢は2つ
このままそこで死ぬか。
それとも共犯者になるか。
お前が選べ。
どっちがいい?
電話の相手に放った言葉。
そんなこと言われたら、答えなんか決まってしまう。
死ぬような物好きはいないだろう。
やはり答えはでたようで、ツエルブが来た道を戻り、ナインは電話で指示を与えている。
一般的な女子の歩幅を考えた上での指示だろうか。
頭の中で想像してみたら、かなり的確だ。
「急いで!」
ナインの声が荒ぶった。
彼なりの心配、なのだろうか。
「俺たちも行くぞ」
「うん」
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