第10章 # 7.5 TILL the LAST
大きなスーパーに3人。
誰も、私たちが世間を騒がせているテロリストだとは思わないだろう。
笑顔で店員は挨拶をしてくる。
よく会う食品コーナーのお兄さんは試食を大盛りにしてくれる。
優しいお姉さんはどのメーカーがいいか教えてくれる。
おばあちゃん達はニコニコ私たちを見ながら、仲良いのねぇなんて言ってくれる。
こんなところで、人間の温かさに触れてしまう。
「珍しいよね、東京でこんなに人が温かいのって」
「…あぁ」
「だから、よくここに来ちゃう」
他人の温かさに触れてられなかった私が、ここで温かさを覚えてしまった。
ぬるま湯みたいな場所が、心地よくなってしまったのだ。
大きなスーパーとはいえ、大通りからは離れている。
そして、その裏には美味しいクレープ屋さん。
どうしてもみんなそっちに行ってしまうから、来てくれる人には最大限の親切で接してくれる。
「2人と来れて良かったよ」
「え?」
「ひとりだけじゃ、寂しいから」
そういうと、両肩に2人の手が乗った。
「名前はもう、ひとりじゃないから」
「俺たちがいる」
「へへ、うん。そうだよね、ありがとう」
3人で荷物を抱え、スーパーを後にする。
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