第10章 # 7.5 TILL the LAST
「…ん」
頭痛で目が覚めた。
起き上がろうとすると、右手に違和感を感じた。
「あ、おはよ名前」
「ツエルブ。おはよ」
「ナインのこと、離さなかったんだよ」
ん?
悪戯っ子のような笑顔を浮かべるツエルブに、首を傾げる。
「寝てた名前をお姫様抱っこまでして、ナインがここまで運んだんだけど、名前が手を離さないからナインも一緒にそこで寝てたってワケ」
「はぁぁぁぁ…悪いことしたな」
大きくため息をつく。
ナインは、私の手を握りながら床に座って、頭をソファに乗せて寝ていた。
「名前、魘されてたしね」
「うそ…」
「だから手、握ってるんだよ」
目線を手元まで下げる。
キツく、離れないように手が重なっている。
「あぁ、無断で男が女の子の部屋に入るのは失礼だからってナインが言ってここに寝かせちゃった。身体痛くない?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
「リサが使ってるけどいい?」
「いいよいいよ、リサも疲れてるよね」
ツエルブから、軽食と薬が渡された。
「頭、痛いんじゃない?」
「え?」
「小さい時にもあったでしょ。その時と同じ顔してる」
「ありがとう」
「アーンしてあげる?」
「いっ、いいよ!食べられるから!」
慣れない左手でコーンフレークを掬い、口へ運ぶ。
ザクザク、とまだ牛乳が染み込んでいないため、音が響く。
ナインが目を覚まさないあたり、相当疲れたのか。
「今日買い出し行く予定だけど、名前どうする?」
「私も行く。トリートメント違うやつが欲しいから」
「じゃあ、ナインが起きて準備が終ったら行こう」
頷き、薬を水と一緒に流し込む。
「リサは留守番?」
「うん」
「そっか」
少し、沈黙が続く。
「名前が無事で、本当に良かった」
「ごめんね」
「違くて。また、名前がどっかに行っちゃうかと思った」
眉を下げて、ツエルブは笑った。
「もう、2人から離れないから。ね?ずっと一緒だから。最後まで」
そうだね、と今度は嬉しそうに笑った。
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