第9章 # 7 DEUCE
「さっきナインに会ったの」
「!?」
いつのまに。
「大丈夫よ。私は何もしてないから」
「私は、て何よ」
「ふふっ。少しだけ危ない目にあっただけよ」
こいつが、ナイン相手に何もしないわけがない。
「それにしても…貴女に手錠をかけてあげる日がくるなんて思わなかったわ」
「ふざけないでよ…」
「私は至って真剣よ?」
自信満々の笑みを浮かべハイヴは私の頬に手を添えた。
「あなた達のお友達、ほっといたらすぐに死んじゃうわよ?」
「…あの子は大丈夫よ」
手錠で、自由の効かなくなった手ではハイヴの手を払えない。
そんな私を見て、ハイヴは手錠を外した。
「やっぱり、貴女に手錠は可哀想ね。特別に外してあげる」
カチャカチャ、と金属の音が響き、手から重たい物が無くなった。
「あら、お礼も無し?」
「……ありがとう」
クラレンスの手からニット帽を奪い取り、元の髪型に直す。
暫くの沈黙が続く。
別に、今更話すことなんてない。
だからといって、逃げだそうとすれば、命の保証はない。
彼女はそういう人間だ。
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