第8章 # 6 READY OR NOT
電車の中では、なるべく当たり障りの無い話題を提示しようかと思ったが、リサの方から話題が飛んできた。
「3人は、本当に仲が良いんだね。」
「え?」
「ツエルブがね、2人の話をしてくれたの」
あぁ、屋上でそんな話をしてたのか。
「"名前は、すごく頭が良くて、運動もできて、すごく頼もしいけど、たまには俺たちにも頼ってほしい"って言ってたよ」
リサの口から出た言葉に、胸が熱くなる。
思わず下を向いて、私は黙ってしまう。
「ご、ごめんね。私が口出す事じゃないよね…」
あわあわ、と手を左右に振るリサ。
素直な良い子なんだ、と再確認。
「ぷっ、あははっ。大丈夫大丈夫。ありがとう、教えてくれて」
「?」
急に笑い出した私に、リサはキョトンとした。
「ねぇリサ」
「何?」
「…人に頼るのって、難しいんだ」
私たちは、ずっと3人だけで生きてきたから、それぞれが自分の事を自分でやらないと生きられなかった。
大人に頼ることなんか出来ないし、誰かに頼ったことなんか無かった。
「頼り方を知らないんだ。私は」
「名前…」
リサは下を向き、グッと拳に力を入れた。
「名前!今度、料理教えて?」
「え?いいけど」
「あの、そういう事じゃ無くて、その…これが、頼るって事じゃないかな?わ、私もよくわかんないけど…」
あぁ、リサは私に頼る事を教えてくれたんだ。
頼りない子だと思ったけど、すごく芯は強いんだ。
「ふふっ。ありがとう、リサ」
「ど、どういたしまして!」
初めて、私の前でリサがちゃんと笑ってくれた気がする。
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