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[残響のテロル]もう1人のテロリスト

第8章 # 6 READY OR NOT



「名前」
「あ、登れた?こっち座って」


トントン、と私の前を手で示す。

「どうした」
「傷の手当」


背中を向けて座るナインに、そう答える。


「あぁ、結構酷いね」
「そうか?」
「ふっ、何それ強がり?」


傷を指で少し触ってみると、ナインの体が大きく揺れた。

痛いんだなぁ…。

体を乾かすためにパタパタと傷口をうちわであおぐ。

「ちょっと痛いかもよ」


乾いてきたところで、手当を始める。


痛いんだろうけど、声を出そうとしないナイン。
男らしくなった気がする。


「ナインさぁ、意外と筋肉あるよね」
「特に意識したことないけどな」
「細マッチョはモテるらしいから」
「モテても意味無いだろ」


溜息交じりにナインはそう言った。

「まぁ確かにそ…」
「好きな奴意外に好かれても、面倒だ」

私の言葉を遮るナインの言葉。

「は?ナイン好きな人いるの?」
「さぁな」

ズキッ…、と心が痛くなる。
なんだろう。


「ははっ、何それ」

自分の口からは乾いた笑いしか出てこない。
そっか、ナインに好きな人…か。


「じゃあさ、たまに思わない?生まれた場所が違ったら、時間が違ったら、恋愛だって普通に出来たかもしれないって」


ナインは黙ってしまった。
この話題はダメだったかな…


「思わないな。あの場所に居たから、名前やツエルブに会えたんだ。それ以上に望むことは無い」
「…そっ、か」


嬉しい、かな。
ナインがそんな風に思っててくれてる事が。


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